
いま、飲食店経営の前提条件が大きく変わっている
ここ数年、飲食店を取り巻く環境は大きく変わりました。
「何でも高くなった」という感覚は、もはや多くの経営者が実感しているはずです。
原材料費、エネルギーコスト、物流費。
以前であれば一時的な上昇として受け止められていたものが、
今では常態化し、元に戻る気配はほとんど見えません。
これは単なる値上げラッシュではなく、
飲食店経営の前提条件そのものが変わってしまったと捉えるべき状況です。
ここ数年で「当たり前」が一気に壊れた
これまでの飲食店経営では、
「多少原価が上がっても工夫で吸収する」
「忙しくなれば売上でカバーする」
という考え方が、ある程度は通用してきました。
しかし現在は、
原材料費の上昇幅そのものが大きく、
努力や我慢だけでは吸収できない水準に達しています。
さらに、電気・ガスといったエネルギーコスト、
物流費の上昇も重なり、
一つひとつは小さく見えても、
経営全体に与える負担は確実に積み上がっています。
為替・国際情勢に加え、世界的な食料需給が変わっている
価格上昇の背景には、為替や国際情勢の影響もあります。
円安が進めば、輸入食材の価格は当然上がります。
しかし問題は、それだけではありません。
世界的な人口増加により、
食料そのものの需要が年々増え続けています。
穀物や畜産物を中心に、
「価格が高い」だけでなく、「必要な量を安定して確保しにくい」
という状況が、現実として起きています。
輸入に依存する割合の高い日本の飲食業は、
この影響を特に受けやすく、
今後も原材料調達の不安定さは続くと考えられます。
「一時的な値上がり」ではなく「構造的インフレ」
重要なのは、
この状況を「一時的な異常事態」と捉えないことです。
「もう少し耐えれば落ち着く」
「いずれ元の価格に戻る」
そう考えて判断を先送りしてしまうと、
気づかないうちに利益が削られ、
体力を失っていきます。
今起きているのは、
構造そのものが変わってしまったインフレです。
つまり、以前と同じ前提で経営を続けること自体が、
リスクになりつつあるということです。
すべてが高くなり、下がる理由が見当たらない時代
現在の飲食店経営で厳しいのは、
「高くなっていること」そのものよりも、
下がる理由が見当たらないという点です。
一時的な高騰であれば、
耐える・様子を見るという選択肢もありました。
しかし今は、そうした判断がリスクになりつつあります。
原価は下がらない、下げられない
原材料価格は、以前の水準に戻ることを前提に考えないほうが現実的です。
世界的な食料需要の増加、
生産コストの上昇、
輸送やエネルギーにかかるコスト。
これらが複合的に絡み合い、
「安く作れる構造」そのものが失われています。
飲食店側が努力しても、
仕入れ先が抱えるコストは下がりません。
結果として、
原価を自店だけでコントロールすることが難しい時代になっています。
人件費は今後も確実に上がる
原価以上に、見落とされがちなのが人件費です。
人手不足は一時的な問題ではなく、
構造的なものになっています。
最低賃金の引き上げ、
採用コストの上昇、
教育にかかる時間と手間。
「人を安く使う」ことで成り立っていた経営は、
すでに限界を迎えています。
今後、人件費が下がる理由はほとんどありません。
むしろ、
人を確保するために、さらにコストがかかる時代に入っています。
値上げしても、楽になるとは限らない現実
「原価が上がったから値上げする」
これは必要な判断です。
しかし、値上げさえすればすべて解決するわけではありません。
売価を上げれば、客数や回転率、
オペレーションにも影響が出ます。
価格だけを調整しても、
経営全体の構造が変わっていなければ、
結局はどこかに無理が生じます。
「薄利多売」モデルが通用しにくくなっている
これまで多くの飲食店は、
回転数を上げ、忙しく動くことで利益を確保してきました。
しかし、
原価も人件費も上がり続ける中で、
忙しさでカバーする経営は、
体力的にも精神的にも限界を迎えます。
売上が上がっているのに、
なぜかお金が残らない。
そんな状態に陥っている店も少なくありません。
この章で伝えたいのは、
「厳しい」という事実ではなく、
経営の考え方を切り替える必要がある段階に来ている
ということです。
薄利多売モデルは、大手(資本力のある企業)しか成立しなくなっている
薄利多売は、
「薄利」である以上、圧倒的な売上量がなければ成立しません。
その条件を満たせるのは、
実質的に大手チェーンだけになりつつあります。
大手は、
・大量仕入れによる仕入れ価格の抑制
・資本力を背景にした設備投資
・集中調理やセントラルキッチンによる作業効率化
・厨房機器やオペレーションの標準化によるスピード提供
といった仕組みを持っています。
結果として、
一店舗あたりの売上を高い水準で安定させることができるため、
薄利でも利益が残る構造をつくることが可能です。
中小飲食店が同じ土俵に立つと、苦しくなる理由
一方で、中小飲食店はどうでしょうか。
仕入れ価格は大手ほど下げられず、
設備投資にも限界があります。
人員配置も最低限になりがちで、
スピードや回転率で勝負するのは簡単ではありません。
それでも薄利多売を目指してしまうと、
「忙しいのに利益が出ない」
「売上はあるのにお金が残らない」
という状態に陥りやすくなります。
薄利という前提のままでは、
売上が少しでも落ちた瞬間に、
一気に経営が不安定になります。
薄利は「戦略」ではなく「結果」である
ここで重要なのは、
薄利は選択すべき戦略ではなく、結果にすぎないという点です。
本来、利益は
「たまたま残るもの」ではなく、
意図してつくるものです。
どの商品で利益を出すのか。
どこに人を使い、どこを減らすのか。
どの売上水準なら黒字が維持できるのか。
こうした点を整理せずに、
「とにかく回せば何とかなる」という考え方を続けてしまうと、
今の環境では消耗する一方です。
利益を戦略的につくることが、これからの前提条件
これからの飲食店経営では、
売上を最大化する前に、
利益が残る構造を先につくることが欠かせません。
・利益を生まない商品を抱えすぎていないか
・忙しさに見合った利益が出ているか
・「やらなくていい仕事」に時間と人を使っていないか
こうした視点で経営を見直すことで、
同じ売上でも、残るお金は大きく変わります。
薄利多売で戦う時代は、
終わりつつあります。
これから求められるのは、
規模に合った、無理のない利益のつくり方です。
それでも、利益を出し続けている飲食店は存在する
ここまで読むと、
「もう飲食店経営は厳しいだけなのではないか」
そう感じた方もいるかもしれません。
しかし現実には、
この環境下でも安定して利益を出し続けている飲食店は、確かに存在します。
特別な立地でもなく、
派手な集客をしているわけでもない。
ごく普通の中小飲食店です。
環境が同じでも、結果が分かれる理由
原材料費も人件費も、
厳しい条件はどの店も同じです。
それでも結果に差が出るのは、
売上の多さではなく、経営の見方が違うからです。
利益を出し続けている店は、
「どれだけ売ったか」よりも、
「どこで利益が生まれているか」を把握しています。
感覚ではなく、
数字をもとに判断し、
必要なところにだけ手を打つ。
それを地道に続けています。
特別なことをしているわけではない
うまくいっている店ほど、
派手な施策はしていません。
流行に飛びつくこともなく、
無理な値下げ競争にも参加しない。
広告費を大量にかけることもありません。
代わりに、
・利益が出る商品を明確にする
・オペレーションをシンプルに保つ
・人を増やさず回せる体制をつくる
といった、
当たり前のことを徹底しているだけです。
売上より先に、構造を見ている
利益を出し続けている店は、
売上を追いかける前に、
経営の構造を確認しています。
・この売上水準で、黒字になるのか
・忙しさと利益は釣り合っているのか
・店主の負担が増えすぎていないか
こうした問いを常に持ち、
無理が出る前に修正をかけています。
結果として、
大きく伸びなくても、
安定して続く店になっています。
「できることを、正しい順番でやっている」
成功している店に共通しているのは、
能力やセンスではありません。
「できることを、正しい順番でやっている」
それだけです。
売上を増やす前に、
利益が残る形に整える。
頑張りすぎる前に、
仕組みで支える。
この順番を守っているかどうかで、
結果は大きく変わります。
飲食店経営は、まだ終わっていない
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
ハイパーインフレという言葉が当たり前になり、
「飲食店はもう厳しい」
そんな声を聞くことも増えました。
確かに、環境は楽ではありません。
これまでと同じやり方を続けていれば、
苦しくなる店が増えるのも事実です。
それでも、
この時代でも利益を出し、続いている飲食店は存在します。
違いは、才能や根性ではありません。
「考え方」と「順番」です。
売上を追う前に、
現実を数字で整理する。
無理な頑張りに頼らず、
利益が残る構造を先につくる。
この基本を外さなければ、
飲食店経営は、まだ終わっていません。
すべてを一度に変える必要はありません。
まずは、
「いまの店の状態を正しく知ること」
そこからで十分です。
もし、整理が必要だと感じた方へ
一人で考えるのが大変なときは、
誰かと一緒に整理するだけでも、
見える景色は大きく変わります。
状況やフェーズに合わせて、
以下のような関わり方を用意しています。
① 開業・経営サポート
― 数字と構造から、続く飲食店をつくる
これから開業を考えている方、
または、
既存店の立て直しを考えている方向けのサポートです。
事業計画、商品構成、原価と人のバランスなど、
感覚ではなく、
現実的な数字をもとに整理しながら進めていきます。
② 電話顧問サービス
― まずは、現状を一緒に整理する
いきなり大きな決断をする必要はありません。
「何が問題なのか」
「どこから手を付けるべきか」
を整理するだけでも、
経営の負担は大きく変わります。
電話での対話を通じて、
現状整理と判断のサポートを行っています。
③ 試食会
― 味と数字を、現場で確認する
文章や数字だけでは伝わらない部分は、
実際に味を見て、話すのが一番早いです。
試食をしながら、
「売れる商品とは何か」
「どう組み立てるか」
を一緒に確認する場として、試食会を開催しています。
ライター紹介 Writer introduction
長島昭一 株式会社オイシード 代表取締役社長
数あるサイトの中から、弊社オイシードのサイトにご訪問いただきありがとうございます。 2002年に1号店のラーメン店を出店して以来、ラーメンに関わってきました。FC加盟、オリジナルブランド、FC本部設立、そして現在の食材の販売とコンサルティングという、現在の形になりました。 未経験で脱サラでラーメン店を開業して2022年で20年経ちました。ですので、起業する方の苦労や、売上不振になった時の気持ちはよくわかります。 私どもの経験を利用して頂き、遠まわりしない経営をしていただけるよう支援いたします。
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原価率と売価の科学、利益を生み出すための商品づくり
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